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蜃気楼の女

第37章 田所学園長の復活

「平八さん、平八さん……」
 遠くから心地よい澄んだ声が聞こえてくる。山野櫻子の声と、田所にはすぐに分かった。田所はまぶたを開ける指令を脳に送りこむ。視界の先に、櫻子の笑った顔があった。
「ワァーー 平八さん、気が付いたのね、良かったぁー ひどく、うなされていたから心配したけど、うなされているって、意識が戻るってことでしょ? 目を覚ますのを、期待して待ってたのよぉー ほんと、良かったわぁーー」
 笑っているのに櫻子の目から涙が流れているのを見た田所は、感激し櫻子の手を握りしめていた。
「ごめん、心配を掛けたね、でも、これからは大丈夫だか…… んんぅーー」
 田所が言い終わらないうちに、櫻子が田所にキスをしてきた。田所は初めて女性とキスをしたので心臓が爆発しそうになった。女性に見向きもされなかった男が、こんな美女とキスをしている。田所は天に昇る気持ちだった。長いキスをして満足した櫻子は、唇をゆっくり外した。
「ふふぅふー 平八さん、今まで、お預けばかりでごめんなさい。もう、これから意地悪しないわ、あたしといっぱい…… これから、エッチしていこぅーねぇ」
 田所は櫻子から出た思いがけない言葉に驚いた。
(そうか再生細胞移植手術カプセルを施術したんだ。思い出した。顔がイケメンに変わっているはずだ。だから、今まで拒んでいたのに、キスをする気になったんだなぁ)

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