蜃気楼の女
第40章 橋本のささやき
「尚子…… おーい、尚子ー」
尚子は櫻子と一緒に寝るベッドの中で、橋本の声が聞こえた。尚子は隣に並んで寝ている櫻子の顔を見つめた。
「ねえー 櫻子様、あたし、最近、変なの」
「うーーーん 何? 最近でもないわよ、前からよー」
「何、いってるんですか。冗談じゃなく、聞いてください」
「うん、ごめん、ちゃんと聞くから言って」
「あたし、おじさんの声が聞こえてしまうの…… おじさんを思い出してしまうからなのかしら?」
尚子を見つめていた櫻子は、尚子のほおをなででくれた。
「橋本さんのことはつらかったねぇ。体が邪心・田所に乗っ取られてしまって……」
櫻子は尚子の背中に腕を回し抱いた。尚子は櫻子の柔らかな胸にほおを当て埋めた。安心すると、目から涙がこぼれた。
「櫻子様、おじさんの無念の声が、いつもあたしの中で、毎日、悲しそうな声で、叫んでいるの…… 絶対復活するって、あたしに言うのよ……」
「あらぁ…… そうやって、毎日のように、橋本さんの声がするのって、変ねえ? ねえ? 橋本さんが尚子の体にいるってことは考えられないの? そのとき、橋本さんと会話したの?」
櫻子にそんなことを言われるまで気が付かなかった。尚子は橋本の落ち着いた声を聞くたび、楽しかった記憶がよみがえり、懐かしくて、しくしく、泣くばかりだったことに思い当たった。
「あぁーーー そうよねぇー おじさんがあたしの中にいる? そう、かもしれないわ」
「えぇー やっぱり、そう思うの? でも、そんなこと…… 起こるのかなぁ?」
尚子は橋本とのめくるめくセックスをしたことを、パートナーである櫻子に話していいか、ためらった。仮にも精神は夫・田所になることを知りながら、田所の精神を受け入れる前の、橋本と肉体的な関係を求めて恋人になった。まったくもって、ややこしい状態だった。そんな微妙な状態だから、愛した橋本と交わりたかった。その橋本を愛した気持ちを含め、櫻子に説明し、知ってもらいたい、と思った。
尚子は櫻子と一緒に寝るベッドの中で、橋本の声が聞こえた。尚子は隣に並んで寝ている櫻子の顔を見つめた。
「ねえー 櫻子様、あたし、最近、変なの」
「うーーーん 何? 最近でもないわよ、前からよー」
「何、いってるんですか。冗談じゃなく、聞いてください」
「うん、ごめん、ちゃんと聞くから言って」
「あたし、おじさんの声が聞こえてしまうの…… おじさんを思い出してしまうからなのかしら?」
尚子を見つめていた櫻子は、尚子のほおをなででくれた。
「橋本さんのことはつらかったねぇ。体が邪心・田所に乗っ取られてしまって……」
櫻子は尚子の背中に腕を回し抱いた。尚子は櫻子の柔らかな胸にほおを当て埋めた。安心すると、目から涙がこぼれた。
「櫻子様、おじさんの無念の声が、いつもあたしの中で、毎日、悲しそうな声で、叫んでいるの…… 絶対復活するって、あたしに言うのよ……」
「あらぁ…… そうやって、毎日のように、橋本さんの声がするのって、変ねえ? ねえ? 橋本さんが尚子の体にいるってことは考えられないの? そのとき、橋本さんと会話したの?」
櫻子にそんなことを言われるまで気が付かなかった。尚子は橋本の落ち着いた声を聞くたび、楽しかった記憶がよみがえり、懐かしくて、しくしく、泣くばかりだったことに思い当たった。
「あぁーーー そうよねぇー おじさんがあたしの中にいる? そう、かもしれないわ」
「えぇー やっぱり、そう思うの? でも、そんなこと…… 起こるのかなぁ?」
尚子は橋本とのめくるめくセックスをしたことを、パートナーである櫻子に話していいか、ためらった。仮にも精神は夫・田所になることを知りながら、田所の精神を受け入れる前の、橋本と肉体的な関係を求めて恋人になった。まったくもって、ややこしい状態だった。そんな微妙な状態だから、愛した橋本と交わりたかった。その橋本を愛した気持ちを含め、櫻子に説明し、知ってもらいたい、と思った。