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蜃気楼の女

第41章 未来に向かって

「もう、通っても、いいかしら?」
「はっ 大変失礼いたしました。では、学園長には連絡を入れませんので…… どうぞお通りくださいませ」
 警備員は深く頭を下げたのを見て、櫻子と尚子は舌をペロリと出すと、学園長室に向かった。
「櫻子様、学園長はきょう学園にいるのですか? 」
「いるわ、それはあたしには分かるの。あの人、あたしのこと、怖がっているのよ。平八さんはあたしに超能力があることを知っていても、あたしを愛してくれていたから怖がったりはしなかったわ。でも、邪心にむしばまれてからは別人みたい。とにかく、あたしを避けているのよ。あたしが行くというと、なんだかんだ理由を付けて留守なの。だから、きょうは、お忍びって感じ? すっごく、驚くだろうなぁーフフフゥー」
「はぁー そうなんですねぇ そうよね、せっかく地球征服をもくろんで学園長になり、おじさんの体まで奪ったのに、桜子様に簡単に破壊されたら大変ですものねぇ でも、その恐怖もきょうでおしまいですねぇ」
 尚子はあたしだっていまだに恐いんですもの、と桜子にうっかり言いそうになったが、言葉を飲み込んだ。
「そんな訳で、きょうは静かに計画を遂行するわ、あなたと橋本さんはそばで見届けてくれる?」
 そんな話をしながら歩いていたら、学園長室の前に到着した。櫻子がドアをノックした。
「あっ? どなた? えっ?」
 邪心・田所は明らかに動揺していた。来客があると警備員から連絡が入ることになっているのだろう。それを感じた櫻子は、くすりと笑ってドアノブを握って、わずかに開いて顔をのぞかした。
「平八さん、あ…… た…… し…… よぉー」 

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