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蜃気楼の女

第41章 未来に向かって

 机の前に座って執務をしていた田所は、櫻子の出現に目を大きく見開き、しこたま驚いた。
「あああぁーー」
 邪心・田所は消え入りそうな声を上げると、椅子から飛び上がり、条件反射のごとく後ずさりをしたので、椅子に足を取られて、大きく後ろにのけぞって倒れてしまった。倒れながら後頭部を窓際の枠に勢いよくぶつけた。ゴツンと鈍い音をさせて、腰を壁にはわせるように滑り落ちると、尻を床に付けて静かにうなだれた格好になって動かない。
「あらぁー そんなに驚くことないのにねぇ。 困った人。でも、ちょうどいいわ、寝ていた方がこの人もむやみに怖がらないからいいかもね……」
 櫻子と尚子は、田所の肩と足を抱えると、引きずりながら、学園長席の前の広い空間に移動させた。
「では、これより儀式を執り行います」
 櫻子が宣言をするが、二人しかいない。
「ねえ、あんた、左半分、あたしは右半分ね。肉体は橋本さんでしょ? 脳の中は平八さんでも、体はしっかり感じるんだから、手を抜かず、いい、多分、初めてかもしれないから、しっかり気持ちよくしてやるのよ。まあ、あたしも男の人は初めてだから…… とにかく、逃げられないように、しっかり、縛り上げとくよ」
「櫻子様、初めての人が…… 邪心・田所でもいいんですかぁ? 抵抗ないんですかぁ?」
「ははぁー あんたって、純粋なアラビアーナ人じゃないものね? でも、あんたにもその血が流れているから分かると思うんだけどさ…… あたしたちって、基本、肉体が強じんなら、だれでも愛せるんだ…… なんか、悲しいよね、体が目的みたいで…… 長い間、虐げられてたせいなのかな? 女の子でもすぐに感じるしね…… 誰でも愛せるから誰でも、体が気持ちよくなるし、基本、誰でもあたしたちって構わないのよぉ」

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