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蜃気楼の女

第41章 未来に向かって

 悲しそうな顔で櫻子はそう言うと、田所の右側の手首にヒモを結び始めた。それを見た尚子も左側の手首をヒモで縛り始めた。それぞれの手首、足首にヒモを結んだところで、足と腕を大の字の形にして広げた。桜子は超能力を使って、床にペグを瞬時に打ち込んだ。二人はペグに手首、足首を固定させた。
「用意オッケー、それでは邪心の平八さんに起きていただきましょうか」
 櫻子は田所にキスをして口をふさいだ。そして、鼻を指でつまんだ。しばらくして、呼吸ができなくなった田所が苦しそうにもだえだした。
「うううーーー 」
 田所が両目をいっぱいに広げ首を左右に振って櫻子のキスをはずそうとしている。苦しくて目から涙をあふれさせていた。それを見た櫻子は口を離した。
「あああ、櫻子、助けてくれー 助けてーーー」
 口が自由になった田所は悲鳴を上げながら、頭を上下左右に必死になって動かしている。自分が動けない訳が分からないようだ。
「あら、気が付きましたわね。では、改めて……」
 そう言って櫻子は、田所にゆっくり顔を近づけてからキスをした。田所は目を丸くして驚いている。櫻子がキスをやめて顔を離す。
「き、貴様ぁー いきなり、俺を、どうするつもりだぁーー」
「あらぁー あたしたち、夫婦になったのに今まで何もなさってないのよぉ どうしてかなぁ? あなた、女の人が怖いんではないのかしら?」
「愚かなことを言うな、わたしは教育者・田所平八郎だぞ! わたしは女に不自由したことがない、おまえがあきれるほどのモテモテ男なんだぁー 驚いたろぉー」

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