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蜃気楼の女

第2章 魔性の女・安田尚子

 進一は鳴海の姿を改めてイメージした。しかし、アラビアーナ国って何処に位置しているのだろう。一度も聴いたことのない国名があるなんて、勉強不足もいいところだな、そう思った。
「進ちゃん、あたしもその血を引いているのよ」
「うんうん、なるほどね、分かるよ。でも、ごめん、随分昔に勉強したきりで、アラビアーナ国ってどの辺にあったんだっけ?」
 尚子は椅子から立ち上がると、本棚から本を引き抜いて持ってきて広げた。
「ここよ……」
 尚子が指で指し示すところを見た。
「え? クウェート、サウジアラビア、イラクの接している場所?」
 児玉が見た場所は3国が接している交点に当たるところにアラビアーナ国と手書きで記載があった。
「え? これ国土って言えるの?」 
「あるのよ、あっても、肉眼では見えないだけ。だから、 |蜃気楼《しんきろう》の国と言われているわ」
「そんな話、僕は今まで聴いたことないよ。尚ちゃん、自分が何言ってるか、分かってるの?」
「あたしも母もその国の血を引いているわ。魔性の女の血をね……」
 そう言った尚子は児玉の頬を右手で触れた。
「進ちゃん、すごいわ、血筋でもないのに魔性の能力を手に入れることができたんですもの……」
「え? 今までの幻想じゃなかったの?」

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