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蜃気楼の女

第4章 安田邸

「何で、こんな広い部屋があるの? 道路から見るとうちと同じ広さの敷地だったように思っていたけど、へえー、奥行きがあるんだね」
 進一は部屋の中を見回した。尚子は受験前日に物理的に異次元空間を作り出す能力を獲得した。その方法を使えるようになっていた。脳を支配するだけではなく、物理的な操作も可能になっていた。もう、向かうところ敵なしという恐るべき能力である。進一を操作することなど、赤子の首をひねるほど簡単なことだった。実際尚子は進一の陰茎をくわえて、あっという間にいかせることなどお茶の子さいさいのはずで、幾度か試すが、完全な操作ができなかった。学生時代は自分の写真を見せつけ、オナニーをさせたりしてもてあそんでいたが、今では、何故か能力が進一には働かせられないことが分かったが、どうしてか未だ解明できていない。魔性能力を進一には防御する能力が潜在的にあったようなのである。その能力が出現したに違いなかった。
 マネキン人形が男女10体ずつ、直立して白いカプセルの中に入れられ、2列に並べられていた。尚子が寝起きしていると思われるベッドが1台、ロボットが整然と並んで置かれ、作業台らしき直径3メートルほどの白色の丸テーブルが置いてある。丸テーブルの脇にワゴンが並び、ワゴンにはサイズの違うドリル、のこぎり、モンキースパナ等の工具が綺麗に並べられていた。初めて見る光景であった。在宅した彼女は日常これをいじっているのだろうか? かなりのヘビーな趣味ではないだろうか。進一は尚子の知らない一面を知り、感動した。確か、東大の理工学部だったな、と今更ながら思い出す。彼女は何を専攻したのか。そういえば、彼女の夢を聞いたこともなかった。進一は大好きな尚子のことを何も知らなかった。何も知らなかったけど、そんなこと関係なしに、尚子が好きだった。どんな尚子でも好きだった。尚子しか好きになれないとも思っていたし、実際、今まで尚子以上、大切に思う人は現れていない。
「尚ちゃん、あれ、何なの、かなりリアルな人形だね、まるで、人間みたいじゃない? リアルすぎて気味悪いな。きみは人形を作る趣味があったんだ、以外だな…… 」
「進ちゃん、もっと、近くで見るといいよ…… 」

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