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蜃気楼の女

第13章 児玉進一の幼少期

 珠子はナルミの腕を取り、まじまじと見つめる。ナルミたち、アラビアーナ人は太陽の光を浴びていないから、肌が透き通るように白かった。洞窟の中で、筋トレ、格闘技、超能力増幅トレーニングをすることで、誰もが筋肉質、強靱な体に鍛えていた。ナルミと安田の特別なトレーニング。ナルミと安田の夜の営みは秘密で人に言えるような行為ではない。特に、日本人はセックスに関しては閉鎖的な民族である。握手、抱擁、キスなど、お互いの皮膚を合わせる行動は習慣としていない。
「ねえ、あたしもできることなら教えてくださらない? 」
 そう言った珠子はプロポーションがいいというより、やや肉付きがいい、ふくよかな、抱き心地のいい、ぬいぐるみのような体付きである。
「そうね、簡単に心拍数も上昇するから、新陳代謝も上がって、贅肉が適度に燃焼されるわ。あたしたち夫婦は毎日欠かさずするのよ。でも、珠子さんにはきついかも? 」
 思わせぶりにナルミが珠子の体をなめ回すように見て言う。
「あら、何かしら? ねえ、できるか分からないけど試したいわ。どんな感じなの? 」
「では、試してみる? 」
「ええ、是非、お願いしますわ」
 珠子はにっこり白い歯を見せて快活に言う。ナルミは少し考えてから、珠子には絶対に無理だと思った。
「もう、はまる人ははまるのよね」
 しかし、珠子は絶対にはまらない。それどころか、そんな行為をするナルミを嫌うだろう。むちで人を、攻撃する、される、ことによる快感を理解できないだろう。
「でも、これって、1回くらいでは駄目なの。連続して毎日、最低3日間くらい、やらないと駄目かもね」
 そう言うと、珠子は3日くらいなら、進一のサッカークラブの合宿の時、教えてほしいと頼んだ。冬が過ぎ、夏がきた。珠子もそんなトレーニングの話をすっかり忘却していた。進一はサッカークラブの合宿の案内が書いてあるチラシを見ながら、ナルミとの会話を思い出した。
「そうだわ、サッカークラブの時、何か約束があったような? 」

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