蜃気楼の女
第14章 安田尚子 幼少期
児玉珠子は、5歳の児玉進一の手を引き、一緒に安田家を毎日のように訪れた。家族がいないナルミの子育てを珠子は気遣い介助のため訪れた。
「ナルミさんは大変よね、お母さんはいらっしゃらないの? 」
ナルミが尚子の入浴をするのを、珠子は手伝った。
「母はわたしを産んですぐになく亡くなったし、昨年、父が亡くなったの。それで、身寄りのいないあたしは、母国を離れる決心をして、安田と日本に来たのよ」
「まあ、大変だったわねえ。そんな時期、安田さんもお仕事がお忙しそうで、寂しいわね。安田さん、外務省の課長さんですって? 」
「帰りが遅くて困るわ。進ちゃんが尚子と親しくして、あやしてくれるから助かるわ」
風呂上がりでさっぱりした尚子はご機嫌でベビーベッドの上で、天井を見ながら、ニコニコ笑っている。そのそばで進一は寝転がりながら尚子の顔を眺めていた。尚子が歩けるようになると、進一は尚子の手を引いて、珠子の育てている農園の中をかくれんぼして遊んだ。やがて、月日は流れ、一般的、サラリーマンの父の収入で生活していた児玉家は、近所の公立小学校へ進一を入学させた。
「ナルミさんは大変よね、お母さんはいらっしゃらないの? 」
ナルミが尚子の入浴をするのを、珠子は手伝った。
「母はわたしを産んですぐになく亡くなったし、昨年、父が亡くなったの。それで、身寄りのいないあたしは、母国を離れる決心をして、安田と日本に来たのよ」
「まあ、大変だったわねえ。そんな時期、安田さんもお仕事がお忙しそうで、寂しいわね。安田さん、外務省の課長さんですって? 」
「帰りが遅くて困るわ。進ちゃんが尚子と親しくして、あやしてくれるから助かるわ」
風呂上がりでさっぱりした尚子はご機嫌でベビーベッドの上で、天井を見ながら、ニコニコ笑っている。そのそばで進一は寝転がりながら尚子の顔を眺めていた。尚子が歩けるようになると、進一は尚子の手を引いて、珠子の育てている農園の中をかくれんぼして遊んだ。やがて、月日は流れ、一般的、サラリーマンの父の収入で生活していた児玉家は、近所の公立小学校へ進一を入学させた。