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蜃気楼の女

第18章 2021年3月

「進ちゃん、今、とても気持ちいいのね? あたし、幸せだわ、こんなに進ちゃんに喜んでもらえてる、進ちゃん、大好きよ、もう、絶対、あたしのものよ、これから、ずっとね…… 」
 進一の脳に、尚子が入り込み、言葉を掛ける。進一はそれが幻想であると思っていた。進一はいつも、尚子を幻想の中で淫らに犯し、もてあそんだ。尚子の体内奥深く、何度も精液を放出した。尚子の穴から白濁の液が溢れて出た。尚子は自分のまたから出るその流れ出る液を、自らの手ですくい取りながら口元へ持っていくと、ゆっくり指の先に付いた液をなめた。
「進ちゃんの、きょうは甘い匂いと苦い味が両方するね…… 進ちゃん、もう、どうしょうもない変態だよね」
 尚子はそう言って進一の体を床に寝かせると、進一の腿の上に馬乗りになり、肉棒の先を中心にして、ゆっくり、じっくり、舌の先でなめ回した。進一はその尚子の姿を想像した。僕はこんな淫らな行為を尚子に求めている。どうしょうもない、変態な男だと進一は思う。尚子に対する募る思いを告白する気持ちはどんどん遠ざかった。幻想の中で尚子を犯すしかないふがいない男。どうして、こんなに尚子が好きなのに、優しくして上げられないのだ。いつも尚子の写真を見ながら、幻想の中で、嫌がる尚子を無理矢理、犯し、尚子に恐怖の悲鳴を上げさせていた。尚子がこんな恥ずかしい姿態をさらして、喜ぶはずはない。間違いなく恐怖の雄叫びだ。進一は尚子に対し、日常的に淫らな妄想をしてしまう自分を恥じた。だから、東京に戻っても実家に帰ることはしなかった。尚子に合わす顔がなかった。尚子に会えば、必ず淫らな妄想をしてしまうのだ。まさに好青年を装ったド変態だ。なんで、尚子と離れていた間、どんどん、こんな変態思考になってしまったのであろう。4年間を顧みながら、東京へ戻った。自分でも訳が分からなかった。後悔しながら、門前仲町に建つワンルームマンションに住居を構えた。尚子の住む世田谷と、この江東区、かなりの距離がある。それなのに…… 進一が尚子の妄想に逆らおうとしても、尚子は進一に対する愛を逃さなかった。

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