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美しい影

第3章 転機


そう、あの小学校とかで歌う童謡の曲。

カラオケでそれ歌う?と内心ツッコミを入れつつも、それしか歌えない亜美の生い立ちが少し寂しかった。
きっと人前で歌った経験も無いだろうし、もし途中で歌えなくなったらみんなで歌ってサポートしようと思っていた。


だけど……


兎追いしかの山〜♪小鮒釣りしかの川〜♪


……衝撃だった!

上手い!いや上手いんじゃない。歌唱テクニックはそれほど無い。
けれど、合唱のような元気な歌声ではなく、本当に自分の思いを乗せた、柔らかくも少し悲しい音色。

その声の質は天性のものがあった。

夢は〜今も巡りて〜♪

何というチェストボイスか。一転して響かせるような独特な声質。
横隔膜を鍛えれば、もっと複雑で重厚感のあるミックスボイスになると確信した。

忘れがたきふるさと〜♪

そして高音は魅力的なウィスパーボイス。
思わず、


『天使にラブソングを』


が頭に浮かんだ。それくらいの感動と衝撃だった。

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