
美しい影
第3章 転機
2番に入ると完全に亜美の歌声の世界に全員が釘付けとなった。
そして俺が驚愕している横で、ユカリママは歌声を聞いて泣いていた。
あとで聞いたら、胸を鷲掴みにされて身体の奥から深くジワジワと震えてきて、気付いたら涙が溢れていたとの事。
そんなギャラリーの慌てぶりをよそに、歌い終わった亜美は恥ずかしそうに下を向いていた。
ユカリママが泣きながら亜美を抱きしめると、ハニカミながらもとても嬉しそうにしていた。
そこからはみんなでカラオケという空気にはならなかった。
亜美の知っている曲を探して、どんどん歌ってもらった。
すべての曲が心をちゃんと表しているような歌い方、音色。
俺もユカリもユカリママも亜美が歌う世界観に浸り、幸せな気持ちのままカラオケが終了した。
そして帰りの車の中でユカリとユカリママが興奮しながら亜美を褒めまくる。
そんな中、俺はある一つの事をずっと考えていた。
