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美しい影

第4章 過去


俺は亜美と同じ様に家が貧乏だった。
母は病弱でウチは生活保護を受けていた。

小学校時代はあまり思い出したくはない。

みんなとゲームの話も出来ないし、遊び道具もない。
遠足や修学旅行は惨めだった。
持っていくお弁当は冷凍パスタをタッパーに詰めて持って行ってた。

そんな俺は格好のイジメの的。

中学に入っても変わらなかった。

イジメが社会問題にもなっていたので、カツアゲや暴力はなかったが、からかわれたり、無視されたりは日常的に行われた。
消しゴムのカスを投げられたりといった教師にバレにくい陰湿なものも多かった。

嫌だったが、助けてくれる友達はいなかった。


そんな生活が続いていた中学1年の5月のゴールデンウィーク。

旅行とは無縁の俺は家の近くで開催されているフリマになんとなく出掛けた。


それが俺の人生の転機だったのかもしれない。


そのフリマで500円のクラシックギターを見つけた。
売っていたおじさんに300円にまけてもらってそれを買った。

その日から学校から帰るとひたすら練習した。

毎日血が出るまで狂ったように練習しまくった。
基本的なコード進行から、ひたすらアルペジオで練習したり、
バッキング、カッティング、ゴーストノート、スラップ奏法などクラシックギターのあらゆる技術を磨いた。

ギターを弾いている時だけは嫌な事を全て忘れられたから。

その頃は搔き鳴らす音の中だけが俺の生きる全てだった。

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