
美しい影
第4章 過去
そして忘れもしない中学2年の文化祭。
クラスの催し物には参加せず、一人で中庭の片隅にイスを置き、ギターをずっと弾いていた。
でも気付いたら、50人くらいの人が集まっていた。
視線に耐えられなくなり、演奏をやめた。
一瞬の静寂のあと、盛大な拍手をもらった。
沢山の人達に囲まれるのは初めてだった。無言で頭を下げてその場をやり過ごす。
でもその時が人生で初めて人に認めてもらえた瞬間だったかもしれない。
そして次の日から何もかもが変わった。
クラスの女の子に話しかけられる様になった。
常に何人かの女子が俺の周りにいるようになった。そしたら男も話しかけてくるようになった。
あれだけ続いていた陰湿なイジメもそれ以来パタリと止んだ。
3年の女の人から告白もされた。綺麗な人だったけれど、先輩に目をつけられるのがイヤだったから丁重に断った。
戸惑いもあった。目立つのが怖かった。
何がキッカケでまたイジメが再開するか分からないから。
