
美しい影
第1章 出会い
その後は会話もなく遠くを見つめてタバコを吸っていた。
「ケホッ、ケホッ!」
隣から可愛く咳き込む声が聞こえる。
気になり女の子を見ると、涙目になっていた。
俺は思わず声をかけた。
「大丈夫?」
「あ、いえ。だ、大丈夫です」
そう言ってもう一口吸い込むが、また咳き込んでしまっていた。
誤魔化そうとしているが、あきらかに初めてタバコを口にした感が隠しきれていない。
俺は恥をかかせないようになるべく気を遣って聞いてみる。
「無理してない?タバコ吸うの慣れてないんじゃない?」
「あ、はい初めて吸いました。タバコってどうやって吸うんですか?何か全然上手に吸えないです」
意外にその子はあっさりと認めてしまった。
タバコの火を見つめて困った表情をする少女が可笑しかった。
