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居候と実況者が恋に落ちるまで。

第3章 聞こえてこないけど、聴いている


私がやってこれた理由…そんなの考えたことなかった。だってまだ言ってもここに来て数日だし、一色さんと過ごした時間だけで言ったら24時間にも満たないだろう。

そんな中、まぁ強いて言うなら。

「ええっと…私、料理とかって今まで必要に駆られてやっていたんです。料理が苦手な母親の代わりにとか、一人暮らしだからとか。

だから、ここに来て私が作ったものを一色さんが本当に美味しそうに食べてくださるのを見て、誰かのために料理するのって嬉しいことなんだなぁって・・・」

喜んでもらえるってそれだけで原動力だ。

「ふんふん、確かに一色よく食べるもんね。だけどさ、紗夜ちゃんは家政婦でしょ?仕事で一色にご飯作ってるけど、それは紗夜ちゃんが生きるために必要だからじゃないの?」

「あっ…う、そうでした…私家政婦でした…」

そっか、これは仕事としてやっているから必要に駆られてやっている部類に入ってしまうのか…。

「!、これは一色さんに内緒なんですけど…」

「おっ!いいねそういうの聞きたい!」

「一色さんの声が、好きなんです。たまに聞こえてくる笑い声とか…」

なんかこうやって話してみると私変態っぽい?

「紗夜ちゃんって声フェチなの?」

「いやっけしてそんなことは!…一色さん、確かに最初は冷たい方なのかなと思ったんですけど、あの笑い声を聞いたら…ふふっ」

そう、最初は一色さんの声に気づかなかった。
冷たい言葉や態度で上塗りされていたのかもしれない、楽しそうな一色さんの声は温かくて優しい。私の好きな声だ。

「…紗夜ちゃん、ありがとう」

「へ?何がですか?」

「秘密を教えてくれた紗夜ちゃんにオレも1個、秘密を教えてあげなきゃね。・・・このURLに紗夜ちゃんの好きが詰まってるよ」

赤城さんはそう言って走り書きのメモをくれた。

「あの…これって、」

「くれぐれもメモとそれを見る紗夜ちゃんは一色に見つからないように気をつけて。んじゃ、オレ戻るね、コースも出来たしさっさと仕事しーちゃお!」

「あか、ぎさ!」

なんであんなこと聞いたんですかとか、このURLの先には何があるんですか、聞きたいことが沢山あったのに赤城さんはすぐに行ってしまった。

一色さんに見つかっちゃダメってこれは一体…。

メモを見つめても答えは浮かび上がって来ない。

一色さんが仕事してる時ならこれを?

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