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居候と実況者が恋に落ちるまで。

第3章 聞こえてこないけど、聴いている


どうしても抑えられない好奇心に負けてしまった私はあの後すぐに自室に直行した。

一色さんに知られてはいけない、ということは興奮した頭でもなんとか覚えていたから片耳にだけイヤホンを捩じ込んだ。

赤城さんから貰ったURLを検索にかけると、それはあまり詳しくない私でも聞いた事のある有名動画サイトに繋がって。

そのまま1つの動画が始まった。タイトルは『夜中だし雑談しながら作業』…なんだろ、全然思い当たるものはなかった。

なぜこれを赤城さんは私に…、

『…おっす、シキでーす。タイトル通りゲリラ雑談作業枠、レベル上げと資材集めを俺が眠くなるまでやっから』

「は…?」

『…今日は単純作業だからなるべくコメント拾うけど、ルールは守って楽しくね。お前らも勉強とか作業しながら聞け、な』

「これ、これって…」

聞き間違えるなんてこと、ない。
微かにだけど毎日聞こえる好きな声。

『…あ?SNSのタグ?いいよ、こんな時間にトレンド入ったって何にもなんねーし。…なにお前らで俺を1位にしてくれんの?…しょうがねぇな、んじゃあ…』

一色さんの声だぁ・・・。

普段と違って口が悪いけど、言葉選びも乱暴だけど、これは紛れもなく、一色さんの声!

『 #シキの雑実況 で。え〜、いいよこのくらいの長さが。俺これやりながらそっち見れないからトレンド入ったら教えて。んで1位取ったら…どうする?何かやろうか、俺が。例えばー今回のハッシュタグをTシャツにして着るとか。…は?プレゼント企画はやんない。メンドーだし』

わ、わ、内容はよく分からないし顔が出てる訳でもないけど一色さんが楽しんでこれをしているのが声で分かる。すごく嬉しい。

勝手の分からない動画サイトだけど、色々見てみると一色さんはこれの他にも沢山動画を上げているようだった。

赤城さんのおかげで、一色さんの声が今までより多く聞けるようになったこと。声が好きなんて言ったら引かれるかなぁと思ったけど、思い切って言って良かった!

・・・ん。ん?

一色さんのお仕事ってもしかして、このゲーム実況というやつなのでは…?

だっていつも楽しそうな声するし、こういうお仕事ならずっと話し声がするのにも納得出来る。

一気に見えてきた一色さんという人。

なんだろう、なんか、わくわくする。

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