居候と実況者が恋に落ちるまで。
第1章 事実はゲームよりも奇なり!
「私の母方の従兄弟なんだけど、まぁなんていうか在宅ワーカーで殆ど家で仕事をしてるんだよね。それでっていうか、それなのに?広い家を持て余して荒れ放題…食事だってしてるか分からない不健康、生活習慣病予備軍みたいな生き方してて…」
これはまた…リンちゃんには珍しく簡潔にまとまっていない文章。
「だから、だからって言ったらあれなんだけど。少しでいいからまともな生活するように監視する人がほしいって叔母さんに頼まれちゃって。叔母さんは福岡に住んでて中々息子のところに顔出せないからさ」
確かに親御さんからしたらそれは心配かも。
ひとりで上京した息子が生活習慣病予備軍だなんて。・・・ん?
「息子?リンちゃん今息子って言った?」
「そう、なの。イトコって言ったけど男なんだよね…だから一応私も紗夜に頼むの躊躇ったんだけど、」
「躊躇った、じゃなくて候補にすら入れないでよ!リンちゃん知ってるでしょ、生まれてこの方彼氏いた事ないんだよ!男の人は未知の生き物なんだよ!」
その上育ったのは母子家庭。近くに男の人がいた事なんて今まで一度もない。つまり免疫がない!
「ごめん、だけど聞いて紗夜!柊真くんは猫みたいな生き物だから。雄じゃないから。ね?」
「人間でしょ何言ってるの…?」
リンちゃんが馬鹿になった。
「実はね、一旦私がどんなものか経験しておこうと柊真くんの家に1泊したの。そしたら殆ど仕事部屋から出てこないし、会話も必要最低限だったから。だから、これなら女の子でもいいなって。むしろ家事が出来る女の子がいいって思って。それで紗夜に頼んでます!お願いします!」
「それならリンちゃんが一緒に住めばいいじゃん」
「紗夜、忘れたの?私が高校の時に家庭科の先生に言われた一言を」
そうだった…リンちゃんは高校時代、滅茶苦茶優しいと評判だった家庭科の南先生に『将来は家事の出来る旦那さんか腕の良い家政婦さんを探した方がいいわね』って言わせたんだった…。
「お願い紗夜。まずは会うだけでいいから」
リンちゃんは狡い。私がリンちゃんからの"お願い"に凄く弱いって知ってて言うんだから。
「会う、だけなら…」
こうして高月紗夜は一色柊真と出会うことになる。