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Melting Sweet*Extra

第6章 壊されるほどに*Act.2☆

「実は、酒デビュー当初から甘ったるいのはあまり得意じゃなかったですから。飲めなくはないですけど、進んで飲もうとは思わなかったです。今でもですね」

「――じゃあ、今日は無理させたんじゃない?」

「言ったでしょ? そのカクテルは夕純さんが作ってくれた肉じゃがのお礼だって」

 衛也君は日本酒を喉に流し込んでから続けた。

「無理したと言われれば無理したトコは確かにありますけど……。でも、夕純さんが美味しいと思って飲んでくれたならそれが何よりです。ネットで見付けた時も、夕純さんのイメージに凄くピッタリだと思ったから」

「――私、こんなに優しい感じじゃないと思うけど……」

 まだ三分の一ほど残っているカクテルを眺めながら言うと、衛也君は、「また」と呆れたように苦笑いした。

「夕純さん自身がどう思ってようと、俺にとっては夕純さんは優しい早春のイメージそのものですよ。口では強がりを言ってても、実はとても繊細だから心配で目が離せない」

 衛也君はグラスを置いた。
 そして、私との距離を縮めると、そのまま肩越しに抱き締めてきた。

 鼓動が、トクン、と脈打つ。
 衛也君が私のために作ってくれたカクテルだけのせいじゃない。
 身体が徐々に熱を帯び、衛也君を求めてしまう。

「会社での続きをしましょうか?」

 衛也君は私の耳元で囁き、私の口を衛也君のそれで塞ぐ。

 衛也君から日本酒独特のほろ苦い匂いを感じ、それだけで酔ってしまいそうだった。

 ぼんやりと衛也君の口付けを受けていると、口内で舌が絡め取られた。
 静まり返った室内に水音が鳴り響き、どちらからともなく唇を離すと、透明な糸が名残惜しそうに切れずに繋がっていた。

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