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ママ、愛してる

第5章 瀬戸内

「幸介・・・」

僕を呼ぶ声がした。

振り返ると、由香が立っていた。

「やっぱり、ここにいた」

由香が微笑んだ。

「どうして??」

由香は僕の隣に腰をおろして、答えた。

「絢子ママがね、ここじゃないかって言ってたから、来てみたの。さすが親子だよねえ」

おかしそうに由香が笑った。

僕が訳もわからず、口を半開きにしていると、由香が続けて言う。


「あの後ね、絢子ママが少し落ち着いたから、どこか心当たりがないかってあたしが聞いたの。
絢子ママ、しばらく考えて、
もしかしたら私のふるさとの島かも知れないって」

穏やかな海を見つめながら、由香が言う。

「で、ママが迎えに行ってくれって言ったの?」

僕が言うのを、即座に否定した。

「まさか!絢子ママは、今から迎えに行くって、用意を始めたよ。
あたしは、それを止めて、絢子ママに言ったの。
だったら、一日二日は大丈夫だと思うから、幸介からの連絡を一日だけ待とうって。
幸介が、間違いは起こさないって言ってるんだから、少しだけ考える時間をあげようよって」

「それでママは?」

「もちろん、聞かなかったわ。だから、
『だったらあたしが代わりに行ってきます』って、出てきた訳。
もし居なかったらどうしようって、ちょっと不安だったけどね」

「そう、なんだ・・・。」

「ショック?絢子ママが来なかったから」

僕は首を振った。

「由香が来てくれて良かった。
ママが来てたら、逆に由香のことが心配でいられなかったと思う」

「絢子ママのことは?」

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