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ママ、愛してる

第5章 瀬戸内

「ママは絶対に、間違いなんて犯さない。
ママにもし何かあれば、僕を不幸にするってわかってるから。
僕が一生、十字架を背負って行くような行動はしない」

それは、僕が固く信じている。

そしてママも、僕がママに十字架を背負わせるようなことはしないって、信じているはずだ。

「やっぱり親子ねえ・・・」

由香はもう一度、言った。

そして二人で、海を見ていた。



どのくらい、そうしていただろう。

由香の携帯が鳴った。

「あ、絢子ママ。幸介、大丈夫ですよ。今一緒にいます。ええ、恋人みたいに、並んで海を見てますよ。代わりましょうか?」

由香が携帯を差し出した。

『コウ、ごめんね。辛い思いをさせて』

電話の向こうで、ママが涙声になる。

「僕の方こそ、ごめん。心配かけて・・・。
ママは、少しも悪くないから。
それに、由香も」

『うん。無事でいてくれて、ありがとう。帰りを待ってるからね。じゃあ、由香に代わってくれる?』

僕は、由香に携帯を渡した。

「良かったですね。実はあたしもちょっと不安でした」

ママが電話の向こうで何か話しているが、潮騒の音で僕には聞こえない。

「ええ!ホントにいいんですか?
じゃあ、お言葉に甘えて。ゴチになります」

そう言って、由香は電話を切った。

ママが何を言ったのか気になって、僕は尋ねた。

「ママ、何だって?」

「あのね、この島1番のホテルを予約しておくから、ゆっくり美味しいものでも食べて帰っておいでってさ。太っ腹!」

由香が嬉しそうに言った。

昨日の由香の様子を見ていた僕には、由香の雀躍せんばかりの様子が理解出来なかった。








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