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ママ、愛してる

第5章 瀬戸内

二人で宿に戻ると、おばさんが昼ごはんの支度をしていた。

忙しく働くおばさんに僕は遠慮がちに声をかけた。

「お帰り。もうすぐ昼ごはん出来上がるけん、ちょっと待っててなあ。あれ、その人は?」

おばさんが由香を見つけて尋ねた。

「姉です。幸介がお世話になりまして」

「そう、お姉さんかね。姉弟揃って、美男美女やねえ」

「ありがとうございます!あら、いい香り。いりこ出しですね?」

「そうじゃ。あんたも一緒に食べるかね?うどんしかないけど」

「いいんですか?いただきます!」


由香が、うまく話を合わせるのを、僕は目を丸くして聞いていた。


「それとね、お姉さん」

おばさんに向かって、由香が言う。

「やだよ。民宿のおばさんに向かって、お姉さんなんて」

まんざらでもなさそうに、おばさんが笑う。

「だって、あたしの1番上のお姉さんと、そんなに変わらないお年みたいだし」

「そうなんかい?」

「でね、お姉さん。幸介が何日かお願いしたと思うんですけど、学校行事忘れてて連れて帰らなきゃならないの。
急なんですけど、いいですか?」

「そんなことかい。うちは全然構わんよ。今日はお客さんもおらんし、まだ、晩御飯の仕度もしとらんけん」

「すみません」


僕たちは、うどんと海鮮丼の昼ごはんを食べて、宿を後にした。

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