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ママ、愛してる

第6章 交錯

電車は予定通り、駅に着いた。

あと10分もあれば、家に着く。

二人で並んで、ゆっくりと家路を歩いた。

駅に到着する少し前から、由香は普段の様子に戻っていた。
もちろん、心の中では、大変な葛藤があるのはわかっているが、少なくとも見た目はいつもの由香だった。

玄関の前に、ママの姿が見えた。

「絢子ママー!」

僕が声を出そうかどうか迷っている間に、由香が手を振って走り出した。

「おかえり!」

飛び付く由香を、ママが抱きしめた。

僕は、なんとなく気勢をそがれて、大股で歩いて帰り着いた。

「ただいま。勝手なことして、ごめんなさい」

「そうだぞ、幸介。絢子ママは、本当に心配してたんだから。ねえ、絢子ママ」

「ともかく、おかえり。幸介」

ママは少し涙ぐんでいた。


三人揃って家に入ると、由香は当たり前のように台所に向かう。

「絢子ママ、後は温めるだけで良いの?」

「少しゆっくりなさいな。疲れたでしょ?」
エプロンを着けて張り切る由香に、ママが言う。

「全然!それよりお腹空いちゃった。
あっ、絢子ママ、これいりこだしのうどん?」

「そうよ。あなたたちが島に行ってるってわかったら、食べたくなっちゃった」


食事が終わって、コーヒーを飲みながら、ママが由香に言った。

「今回は本当にありがとう。由香には本当に感謝してるわ」

「そんなことないですよ。今までお世話になりっぱなしなんだから。
それに、あんな豪華なご馳走、あたし、初めてでした!」

「そう。喜んで貰えてよかったわ」

「由香、ありがとう」

僕もお礼を言った。





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