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ママ、愛してる

第6章 交錯

由香が家を出るとすぐに、ママが僕に言った。

「コウ。あなたも今すぐ、やることがあるんじゃない?」


ママが僕を見つめる。

動かない僕に、ママはじれったそうに言った。

「まだ、近くにいるわよ。自転車で行けばすぐに追い付く」


「ごめん、ママ!」

僕は靴を突っ掛けて、走り出た。

自転車を思い切り漕いで追いかけると、国道をとぼとぼ歩く由香に追い付いた。

「由香!」

僕が大声で呼ぶと、驚いたように振り返った。

「幸介!どうしたの?
忘れ物してなかったよね?」

バッグのなかを確認しようとする由香。

僕は自転車を放り出して、抱きしめた。


僕の腕のなかで、由香が言う。

「どうしたの?絢子ママは?」


「ママがね、今すぐにやることがあるんじゃないって。
だから、追いかけてきた。
そんなことにも気付かないなんて、僕はまだまだだね」

由香の手が、僕の背中に回る。

「ホントに、ガキなんだから」

その場で僕たちは、しばらく抱き合っていた。



由香のアパートまで送っていき、僕はママに電話を入れた。


由香を無事に送り届けたと言うと、

ママが言う。

『コウ、今夜は帰って来なくていいわ』

「でも・・・」

『コウ、由香とゆっくり話さなければならないこと、あるでしょう?』

そう言うと、一方的に電話を切った。

「絢子ママ、何て言ってた?」

由香が不安そうに尋ねる。

「二人でじっくりと話し合えって・・・」

「そう。ホントに絢子ママは、わかってたんだね」

僕は頷いた。

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