無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

どれほど車に乗っていたかわからない。
10秒くらいな気もするし、1時間くらいな気もする。時間の感覚が全くわからなかった。
唐突に車が止まる。
後部座席が倒されて、座っている状態から、揉み合いになりながら、無理やり押し倒される。狭い車内で、永山が花実に馬乗りになる。

足元で、卵が割れた音がした。
楓が。楓がこれで。オムライスを作ってくれるはずだったのに。

「やっと、全部受け入れる気になった？」

かろうじて、震えながら、言葉を絞り出す。

「赤葉紅も……角村楓も……わたしが守る」

その瞬間。
……バチン!!!

永山が花実の頬を打つ音がした。
右頬に痛みが走る。
泣かない。こんな奴のために泣かない。
歯を食いしばるも、涙が耳の方へ伝って落ちていった。