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誓いのガーランド

第4章 繋がる輪 3

花実は気を取り直して、そのまま会議の資料に目を通した。

……ほんと、いつでもよくできてるなぁ。

簡潔で分かりやすい。目の行くところにきちんと見て欲しい情報を配置している。
角村は、資料をつくるのが抜群に長けている。
それは、同期からも上司からも評判がいい。

角を立てない営業に、誰にでも見やすい資料、上司の顔は立てつつ、自分は裏に回る感じは、実に卒がない。

だけれど、裏に回っているからか、表立って角村をどうこう言う人はいない。
出世しようと思えば、できるだけの実績を持っているだろうに。

花実はなんとなく、角村のデスクに目を向けてから、午後の仕事を開始する。
パソコンの電源を入れた。ゆっくりと立ち上がる間にもう一度、彼が猫を描く姿を想像して、笑みがこぼれた。

そんな花実の元に、後輩が近づいてくる。

「あ、宇吹さん、いま時間大丈夫ですか?」

声をかけられて、表情を引き締めてから、顔を上げた。後輩の相談に助言をするうちに、すっかり仕事に気持ちがシフトしていった。

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