テキストサイズ

誓いのガーランド

第22章 嵐のあとに 5

開けたドアの隙間から光が差し込む。

一瞬だけ目が眩んだ。
明るさに慣れた目の前に、最初に広がったのは、夏の青い空と、大きな入道雲だった。
生ぬるい風が、花実の額に少しだけ滲んだ汗を撫でる。
太陽に照らされて、暑熱くなったアスファルトから熱が立ち上って、花実の体を包んでいた。

蝉の声がする。
車が走る音も。
子どもの声や、近くの家の風鈴の音。

久しぶりに、たくさんの音が花実の耳に流れ込んだ。

気がつけば花実は、大きく伸びをしていた。
息を吸い込んで、吐く。

……夏の匂いもする。

もちろん、扉を開けても誰もいない。
その事実が、花実の心拍数を徐々に落ち着かせていった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ