ユリの花咲く
第2章 瑞祥苑
夕方5時を回り、お泊まりの3人を残して、利用者さんは帰宅していった。
ここからデイサービスは、夜の態勢に入る。
昼間のソファーをベッドに組み替え、転落しないようにフロアーの隅の壁際に移動する。そのままでは固いので、上に布団を敷く。
ベッドとベッドの間隔は取るようにして、パーティションで仕切る。
出来るだけプライベートな空間を作るようにはするが、フロアー1部屋に、何人もが寝ることになる。
雑魚寝させていると批判される事もあるが、実際の介護の現場では、そうせざるを得ない現実もある。
個室にすれば良いが、そうするとコストがかかる。それは当然、利用料の上昇に繋がり、経済的に恵まれていない家族には、大きすぎる負担となる。
特別養護老人ホーム等への入居は、何百人と希望者が待機している。
結局、自宅介護と施設の狭間を埋める手段として、瑞祥苑のような施設が誕生してきたのだ。
話を物語に戻す。
私は、3人に夕食を提供し、終わった順に口腔ケア(ハミガキと入れ歯洗浄)をしながら、遥が出勤して来るのを待つ。
拓也は、今日の介護日誌のチェックと、夕食後の洗い物、そして明日の朝食の支度だ。
山田さん以外のお泊まりは、梅沢晴夫さんと竹原幸枝さん。どちらも認知症はあるが、穏やかな人たち。
3人とも連泊している人たちで、行動パターンはわかっていて、気分は楽だ。
幸枝さんは、足元が覚束ないので、夜間に何回かトイレに連れていかなければならないが、それ以外は熟睡している。
梅沢さんは、トイレも自分で行けるし、殆んど手が掛からない。
ただ、何か事故があるといけないので、ベッドからトイレに座るまでは、見守りが必要だ。
山田さんには、夜間だけ個室を与えている。
昼間は問題児なのだが、夜間は意外に優良児で、朝まで爆睡することが殆んどだ。
ただ、まれに目を覚ますと、女性の利用者さんに『夜這い』を掛けることがあるので、個室で寝かせ、入り口に介護士が鎮座するようになった。
口腔ケアが終わり、幸枝さんにリハビリパンツを穿かせて、ベッドを設えていると、遥がやってきた。
「おはよう!有紀さん、拓也、いつもありがとう」
遥が言った。
本来なら、口腔ケアや ベッドの設えは、夜勤者の仕事になっている。
けれど、夜勤者はひとりなので、日勤の者がある程度準備して帰るのが、慣習なのだ。
ここからデイサービスは、夜の態勢に入る。
昼間のソファーをベッドに組み替え、転落しないようにフロアーの隅の壁際に移動する。そのままでは固いので、上に布団を敷く。
ベッドとベッドの間隔は取るようにして、パーティションで仕切る。
出来るだけプライベートな空間を作るようにはするが、フロアー1部屋に、何人もが寝ることになる。
雑魚寝させていると批判される事もあるが、実際の介護の現場では、そうせざるを得ない現実もある。
個室にすれば良いが、そうするとコストがかかる。それは当然、利用料の上昇に繋がり、経済的に恵まれていない家族には、大きすぎる負担となる。
特別養護老人ホーム等への入居は、何百人と希望者が待機している。
結局、自宅介護と施設の狭間を埋める手段として、瑞祥苑のような施設が誕生してきたのだ。
話を物語に戻す。
私は、3人に夕食を提供し、終わった順に口腔ケア(ハミガキと入れ歯洗浄)をしながら、遥が出勤して来るのを待つ。
拓也は、今日の介護日誌のチェックと、夕食後の洗い物、そして明日の朝食の支度だ。
山田さん以外のお泊まりは、梅沢晴夫さんと竹原幸枝さん。どちらも認知症はあるが、穏やかな人たち。
3人とも連泊している人たちで、行動パターンはわかっていて、気分は楽だ。
幸枝さんは、足元が覚束ないので、夜間に何回かトイレに連れていかなければならないが、それ以外は熟睡している。
梅沢さんは、トイレも自分で行けるし、殆んど手が掛からない。
ただ、何か事故があるといけないので、ベッドからトイレに座るまでは、見守りが必要だ。
山田さんには、夜間だけ個室を与えている。
昼間は問題児なのだが、夜間は意外に優良児で、朝まで爆睡することが殆んどだ。
ただ、まれに目を覚ますと、女性の利用者さんに『夜這い』を掛けることがあるので、個室で寝かせ、入り口に介護士が鎮座するようになった。
口腔ケアが終わり、幸枝さんにリハビリパンツを穿かせて、ベッドを設えていると、遥がやってきた。
「おはよう!有紀さん、拓也、いつもありがとう」
遥が言った。
本来なら、口腔ケアや ベッドの設えは、夜勤者の仕事になっている。
けれど、夜勤者はひとりなので、日勤の者がある程度準備して帰るのが、慣習なのだ。