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ユリの花咲く

第2章 瑞祥苑

「有紀、このしょうが焼き、美味しい!」

「そう?市販の生姜焼のタレじゃないからね」

遥と一緒に、私もお弁当に手を伸ばす。

私もまだ、夕食を済ませていない。
いつもこうしてお弁当を届け、瑞祥苑の夕食と一緒に2人で食べるのだ。

「あのね、今日の夕食のサバの塩焼き、食べてくれない?」

「そっか!遥はサバが苦手だったね。
じゃあ、しょうが焼き全部食べてもいいよ」

「ラッキー!いただきま~す」

こんな感じで、2人のディナーを楽しんでいる。


お腹が膨らんだ所で、遥が訊ねてくる。

「ねえ、有紀。今日の面接の人、くるのかなあ?」

「多分ね。じゃなきゃ、私や遥を紹介したりしないよ」

「だよね」

「嫌なの?」

「その逆!だって正社員が増えたら、あたしたちの夜勤、減るでしょ?
そしたら、有紀との時間が増えるもん」

遥が嬉しそうに言った。

「でも、その分、給料減るよ?」

私が言うと、遥は少し考えて、言った。

「すこしくらい、いいや。だって、有紀といっぱい一緒にいたいもん」

遥が私の肩に、頭を乗せてくる。

「そうだよね。私たち、ダブルインカムだから、少しくらい下がってもいいか」

「うん!」
遥は嬉しそうに頷いた。


実際、瑞祥苑の夜勤シフトは、結構キツイ。

私と遥、拓也、宮沢施設長、それからパートの深津優子さんで組まれている。

佐久間さんは日勤専門だから、関係ない。

深津さんはパートだから、週に1日だけ夜勤に入る。
宮沢施設長も、週に1日。

瑞祥苑は年中無休で定休日はないから、

31日の月ならば、深津さんと施設長の合計8日を引いて、23日を私と遥、拓也の3人で回すことになり、ひとり7~8日の夜勤になる。

これは結構ハードな勤務になる。

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