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ユリの花咲く

第3章 新人がきた

そして、黒木に教える。

「あとは、5分したら声をかけましょう。
で、今度は、浴槽から上がるとき。
ちょっとしたことで転倒するかも知れないから、しっかり手すりを持たせて、浴槽から出るときには腕を抱えてね」

「はい」

黒木は答えた。

5分が経過して、私は潤子に声をかけた。

が、返事がない。

その代わりに、
『うんっ!うんっ!』
という、悩ましい声がする。

「わかります?何してるか」

私は黒木を見た。

「は、はあ、何となく・・・」

「多分、その通りです。
江角さん!開けますよ!」

私は、浴室の扉を開ける。

浴槽の中には、片手で自分の乳房を揉み、もう片方の手で自分を慰めている潤子の姿があった。

私の後ろで、黒木が動揺しているのが伝わってくる。

見られているとわかっていても、自慰を止めない潤子。

「さあ、潤子さん。もう、終わりだよ!」

少しキツイ声で言うと、しぶしぶ潤子は立ち上がった。

それにしても、潤子は均整の取れた綺麗な身体をしている。

男好きのする顔立ちに、まだ張りを失っていない乳房。多少贅肉が付いているにしても、ウエストはちゃんとくびれもあって、お尻の肉も垂れてはいない。

認知症がなくて、キチンとメイクをして街に出れば、熟女好きな男たちのナンパの対象に、充分なるだろう。

脱衣室で、身体を拭くのを手伝い、髪を乾かす。

ノンビリとした動作で、潤子はショーツを穿き、ブラジャーの肩紐に腕を通す。

私は、ブラジャーのホックを止めてやり、ワンピースを着せた。

「ありがとねぇ」

潤子は礼を言って、フロアーに戻っていく。

「深津さん、お願いね」

私は、フロアーで利用者さんの相手をしている深津さんに声をかけた。

「はーい!了解!」

深津さんは、潤子を椅子に座らせて、ポカリスエットを飲ませた。

私は、浴槽の湯を抜き、浴室を洗う。

そして、次の利用者さんのために、お湯張りボタンを押した。

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