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ユリの花咲く

第3章 新人がきた

それから、あと3人の入浴介助を、黒木に教えながら行った。

「結構キツイですねえ!」
最後の入浴介助を終えて、浴室を洗いながら、
黒木は言った。

「そうねえ。でも、大抵は2人で手分けしてやるから、慣れればそれほどでもないわよ。
夏場は汗だくになるけどねえ」

私は、使ったタオルや、汚れた衣類を洗濯機に掛けながら答えた。

少し休憩を取って、ポロシャツとジャージに着替えると、もう昼食の時間だ。

深津さんが食前の口腔体操をやっている間に、私は食事のお盆をチェックし、
黒木にも説明する。

「一気には覚えられないと思うけど、よく見ておいてね。
江角さんは、常食。つまり、加工はなし。
山田さんは、一口サイズに切って、味噌汁やお茶にはトロミを付ける。梅沢さんは・・・」

と、一通りの注意点を伝えた。

「佐久間さんがキチンとしてくれてるから、私たちがうっかりしてても、多分大丈夫だけど、
忙しい時には、勘違いしたり忘れたりすることもあるから、常にダブルチェックを実施してるのよ。私が居ないときには、桐谷さんや深津さんが見てるから。
黒木さんも、追々覚えてね」

「食事ひとつでも、いろいろ大変なんですねえ!」

黒木が目を丸くする。

「食札(名前と提供形態等が書いてある札)
には、書いてあるし、
作業の一つ一つは大したこと無いけど、馴れは怖いからね。
じゃ、お盆に乗ってる食札の通りに、利用者さんに配ってくれればいいわ。
名前を呼んだら、返事してくれるから」

「わかりました!」

黒木は返事をして、お盆を配っていく。

「終わりました」

黒木の報告を聞いて、私は次の指示を出す。

「それでは、田辺さんの食介をするから、横で見ていてね」

私は、黒木に説明しながら、食事介助に入った。

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