ユリの花咲く
第3章 新人がきた
だからといって、介護士には絶望しかないのかといえば、そうではない。
いくら利用者が精神を患っていても、人間同士。
心が通じる瞬間がある。
今まで、食事を摂ろうとしなかった人が、少しの工夫で『美味しい』と言って自分から食べ始めたとき、
歩けない利用者さんを介助して、車椅子を使わずにトイレに誘導出来たとき、
オムツ交換して、利用者さんが『スッキリしたよ、ありがとう』と言ってくれた時、
私たちの疲れは消え去る。
私が今、睨み付けている山田実にしても、そうだ。
女を欲望の対象にしか見ていないような部分は確かにあるが、
私たちが他の利用者さんになにかを求める、
例えば皆でレクリエーションをするときに、率先して参加し、乗り気でない人をうまく仲間に引き込んでくれるのは、山田実なのだ。
でも、
遥に対してだけは、許せない。
遥は私にとって、介護士ではなくて、恋人だもの。
「山ちゃん、ベッド出来たよ!」
遥が個室から出てきた。
「おう、サンキュー」
山田が個室に戻って、ベッドに潜り込んだ。
「有紀、ありがとう。助かった」
食器棚の影で、キスをした。
「後は大丈夫だから」
遥に言われて、私は瑞祥苑を出た。
今日も、黒木さんのトレーニングが待っている。
私は家路を急いだ。
いくら利用者が精神を患っていても、人間同士。
心が通じる瞬間がある。
今まで、食事を摂ろうとしなかった人が、少しの工夫で『美味しい』と言って自分から食べ始めたとき、
歩けない利用者さんを介助して、車椅子を使わずにトイレに誘導出来たとき、
オムツ交換して、利用者さんが『スッキリしたよ、ありがとう』と言ってくれた時、
私たちの疲れは消え去る。
私が今、睨み付けている山田実にしても、そうだ。
女を欲望の対象にしか見ていないような部分は確かにあるが、
私たちが他の利用者さんになにかを求める、
例えば皆でレクリエーションをするときに、率先して参加し、乗り気でない人をうまく仲間に引き込んでくれるのは、山田実なのだ。
でも、
遥に対してだけは、許せない。
遥は私にとって、介護士ではなくて、恋人だもの。
「山ちゃん、ベッド出来たよ!」
遥が個室から出てきた。
「おう、サンキュー」
山田が個室に戻って、ベッドに潜り込んだ。
「有紀、ありがとう。助かった」
食器棚の影で、キスをした。
「後は大丈夫だから」
遥に言われて、私は瑞祥苑を出た。
今日も、黒木さんのトレーニングが待っている。
私は家路を急いだ。