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ユリの花咲く

第3章 新人がきた

森田千鶴さんは、80歳になる美人のおばあちゃん。

認知症はそれほど酷くはなく、いつものニコニコしていて、私たち介護士の中ではアイドルみたいな存在。

「わたしの娘時代はね・・・」というのが口癖で、戦時中の苦労話をよくしてくれる。

60歳の時に交通事故に遇い、下半身が不随になってしまい、今は車椅子生活だ。

神経が麻痺しているため、尿意、便意がなく、トイレでの排泄は困難で、普段はオムツで対応している。

到着後すぐと、約2時間おきにオムツをチェックして、排泄があれば交換する。

「黒木さん、今日は森田さんのオムツ交換をマスターしてもらいますからね」
と、私は伝えた。

「はい、でも、森田さん、大丈夫ですかねえ?」

黒木は不安そうな顔をする。

「大丈夫ですよ。拒否はありませんから。
ただ、認知症は強くないので、男性に介助されるのは、正直歓迎はされないとは思います。
でも、たまにお泊まりされる時もあるから、覚えておいてくださいね」

私は答えた。

午前10時に、1度目のオムツチェック。

私は黒木に準備するものを説明する。

新しいオムツとパッド。陰部洗浄用のプラスチックボトル。お尻拭き。使い捨てのラテックスゴムの手袋。汚れたオムツを入れる袋。

用意したものを並べ、黒木を伴って、千鶴さんに声を掛ける。

「千鶴さん、ちょっと見ておきましょうか?」

私が声を掛けると、
「お手数かけますねえ」

と言って頷いた。

「じゃあ、ベッドに行きましょうか」

私は車椅子を押して、山田が夜間利用している個室に入った。
黒木も着いて入ってくる。

私は、個室の扉を閉め、黒木に指示する。

「よく見ておいてね」

千鶴さんを車椅子からベッドに移乗して、ゆっくりと寝かせた。

「千鶴さん、ごめんね。今日は黒木さんにも、覚えてもらうから」

声を掛けながら、千鶴さんのズボンを下ろす。

便の匂いが、オムツから漏れてくる。

黒木も感じたようで、少し顔をしかめている。

「千鶴さん、気持ち悪かったね。今、キレイにしてはあげるね」







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