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ユリの花咲く

第4章 夜勤

「自分でって?」

「ご想像通り。でも、多分お布団は汚さないから、あんまり気にしないで」

「はあ・・・」

「とにかく、今は梅沢さんをお願い」

私はそう言って、戸田美千代さんの就寝介助に入る。

「美千代さん、一度お手洗いに行きましょうか」

わたしが手を取ろうとすると、美千代は首を振った。

「あのね、今日はひ孫が来てるの。私も早く帰らなきゃ」

「あら。娘さん、妙子さんは明日から来るって行ってたわよ。だから、今日ここに来て、お風呂に入って、キレイにしたでしょ?」

私は、言った。
心の奥が、チクリと痛む。

本当は、彼女の娘の妙子から、
『孫が来て泊まるから、預かってほしい』
と、頼まれているのだ。
つまり、美千代さんにとってはひ孫さんだ。

「そうだったかねえ?」

疑わしそうな顔をする美千代さんに、私は言う。
「美千代さん、今日は私も泊まりなのよ。
寂しいから、一緒に居てくださらない?」

私が哀願するような口調で言うと、

「そりゃ、あんたも寂しいねえ・・・。
じゃあ、今夜は一緒に泊まってあげようかねぇ」

そう言うと、私の腕を掴んで、トイレに向かった。

今のところ、江角潤子は、ベッドに入って大人しくしている。
どうか、そのまま眠って!

私は心の中で、祈った。

美千代さんの排泄介助を終え、ベッドに座らせて、
医師に処方されている睡眠薬を飲ませる。

「さあ、美千代さん。寝る前のお薬、飲みましょうね」

私は言いながら、美千代さんの口に睡眠薬の錠剤を入れ、水のコップを手渡す。

美千代さんはゴクゴクと喉をならして、水を飲み干した。

「美千代さん、ちょっとお口の中、見せて」

美千代さんは素直に
『あ~ん』と言いながら口を開けた。

私は口の中に錠剤が残っていないことを確認して、美千代さんをベッドに寝かせた。

「じゃあ、ゆっくり休んでね」

私は美千代さんの髪を撫でながら言った。



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