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ユリの花咲く

第4章 夜勤

「ところで、黒木さん、夕食は?
お腹空いてない?」

私は訊ねた。

昨日、夜勤の時は夜食を用意してくれていると、連絡はしてある。

「食べる時間は、その人の好きな時間でかまわないですよ。ただ、利用者さんが落ち着いてる時間に食べておかないと、結局食べられない時もあるからね」

私は言った。

本当なら、今頃は遥が来て、一緒に食べている時間だ。

『遥は、何してるのかな?』
私は考えた。

「よかったら、黒木さん、先に食べてね。私はフロアー見てるから、事務所でごゆっくり。
あ、それから、申し訳ないけど、電子レンジは使わないでね。チンの音で、利用者さんが目を覚ますから」

私が言うと、

「じゃあ、すみませんが、先にいただきます」

黒木は言って、食事のお盆をもって事務所に消えた。

黒木がいなくなってすぐに、江角潤子さんがごそごそと動き始めた。

私の座っている場所から、3~4メートル離れているが、呼吸が乱れてきているのがわかる。

「あっ、んん!んあっ!」

圧し殺した声が聞こえてくる。

潤子さんは、家でもしてるのかな?

家でも、あんなに圧し殺した声で、してるのだろうか?

私は漠然と考えた。

私は足音を忍ばせて、潤子を囲むパーティションに近づき、隙間から覗いてみる。

興味本位ではない。
自慰をしているのなら、それでかまわないが、本当に呼吸不全になっていたら、救急対応が必要になる。

問題はなかった。
布団の中で両膝をたてて、股間を手で慰めている。

『それ以上、盛り上がらないでね』

私は心の中で言って、ソファーに戻った。

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