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ユリの花咲く

第4章 夜勤

「今日はお泊まりは出来ないよ」

私は、遥を受け入れていた。

『うん!ちょっとだけでいいの。有紀に、ぎゅうって、してほしいの!』

「わかった。それじゃ、忘れ物を取りに来たことにしようか?」

『うん!今すぐ行くから』

遥は電話を切った。

なんとなく、予想はしていたけど、
やっぱり電話してきた。

困った子。

でも、遥に逢えるのが、凄く嬉しい。

明日も仕事なんだから、ゆっくり休めば良いのにと思うけど、

私には、そんな遥が愛しくてたまらない。

私は、フロアーに戻り、利用者さんたちの様子をうかがった。

「今のところ、大丈夫ですね」

私が言うと、ソファーできちんと座っていた黒木が、
『はい。異常ありません』

と、緊張気味に言った。

「あのね、遥ちゃんが何か忘れ物を取りに来るんですって」
私は言った。

「へえ、明日も日勤なのに、大変ですね?」

黒木が言う。

「おおかたウォークマンでも忘れたんでしょ?」

わたしは特に興味無さそうに言った。

「黒木さん、ちょっと今は落ち着いてるし、ソファーで横になって、楽にしてて」

「いいですよ、大丈夫です」

黒木は言うが、私は首を振った。

「夜勤はね、うまくペース配分しないと、身体にこたえるわよ。暇な時は、横になって、身体を休めるの。私も潤子さんの横のソファーで横になるから」

「わかりました」

黒木は、ソファーに寝転んだ。



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