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ユリの花咲く

第2章 瑞祥苑

「オーケー。佐久間さん、ありがとうね。
拓也君、悪いけど配膳だけ手伝ってね」

「了解っす!」
拓也はお盆を両手に持って、テキパキと配膳していく。

「山田さん、お待たせです」

拓也が配ると、
「有紀に配ってほしかったのにな。男に配られても、美味くない」

「じゃあ、食わなくてもいいっすよ。下げましょうか?」
拓也が、やり返す。

「まあ、今日のところは食ってやるよ」
山田実が言った。

最初の頃は、何か言われると腹を立てていたが、最近では上手くあしらえるようになった。

私も配膳をしながら、佐久間さんに目配せをして笑っている。
『ずいぶん成長したよね』
そんな感じで、拓也の作業を見守る。

「ありがとう、早見君。じゃあ、着替えて、休憩してね。田辺さんの食介(食事の介助、手助け)は私がやるから、先にご飯食べてくれたらいいよ」

「ハァイ!それじゃ、お先に頂きます」

拓也は自分の分のお盆を持って、休憩室に行った。


「それじゃ、田辺さんの介助に入りますね。ちょっとフロアーお願いします」

「了解。任せといて」
佐久間さんが請け負った。


食事介助をしていると、奥の事務所から施設長の宮沢京子が顔を覗かせた。

「有紀ちゃん、手が空いたらちょっとお話があるのよ」

「わかりました。施設長、お食事は?」

「有紀ちゃんと話しながらいただくわ」

「じゃあ、後ほど事務所に伺います。施設長のお昼ご飯も持っていきますから」
私は答えた。

食介が終わる頃には、他の利用者たちも食べ終わっていて、佐久間さんが下膳と服薬まで済ませてくれていた。

「佐久間さん、ありがとうございます」

私がお礼を言うと、佐久間さんは手を振って言った。
「良いのよ。それより、宮沢さん呼んでるんでしょ?行ってきて」

2人分のお盆を差し出しながら、
「こっちは大丈夫。もうすぐ拓也も戻ってくるし」
と言ってくれる。

私はお盆を受け取り、事務所に向かった。




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