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ユリの花咲く

第4章 夜勤

「そこに立てて、他の利用者さんから、完全に見えなくして」

黒木は、パーティションを立てた。

「じゃあ、幸枝さんと、戸田さんを見ていて。
山ちゃんは、多分大丈夫だから」

黒木は幸枝さんに、声を掛けている。

「幸枝さん、大丈夫ですよ。ちょっと、嫌な夢を見てうなされただけだから」

と、声が聞こえた。

「ひいっ、ひいいっ!逝く、逝くうぅ!」

潤子は身体を反らせて、逝ったようだ。

今の騒ぎが嘘のように、すぐに小さなイビキを書き始めた。

私は、潤子に布団を掛け、裸体を覆った。

「ゆっくり休んでね」

私は眠っている潤子に声をかけ、その場から離れた。

ソファーに黒木と並んで座り、大きなため息をつく。

「黒木さん、助かったわ。ありがとう」

「そんな、ありがとうなんて・・・。僕一人なら、どうなっていたか」

「それは、お互い様よ。いくら熟練したって、身体はひとつしか無いんだもの。
でも、戸田さんが起きなくてよかったわ。あの眠剤、良く効くんだね」

「そうですね。でも、正直、有紀さんの迫力、ちょっとびっくりしました。あの山田を、従わせるなんて」

「ま、山ちゃんとは、黒木さんが来る前に、いろいろあったからね。ひっぱたく訳にはいかないし。ははっ!」
私は少し笑った。

「あの、潤子さんは、どうしたんですか?急に大人しくなったし・・・」

黒木は不思議そうに訊ねた。

「自分で逝っちゃったのよ。身体を使ったあと、眠くなるでしょ?」

「確かに。でも、潤子さんを押さえ付けてもダメなんですか?」
黒木が訊ねた。

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