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ユリの花咲く

第4章 夜勤

「桐谷さんも、そうだったんですか」

突然、遥の名前を出されて、私は少し動揺した。

「う~ん。遥ちゃんは、どうだったかな。
でも、山ちゃんにセクハラされて泣き出した事はあるよ」

「それで、その時はどうしたんですか?」

「その時はね、私がぶちギレて、山ちゃんに迫ったな。
今日みたいに、低い声で、睨み付けてね。あははっ!」

黒木は少し考えて、言った。

「だからかな?桐谷さんが水野さんに心酔してるのは」

「あの子が、心酔?」

「ええ、いつも言ってますよ。有紀さんは私の師匠なの、って。
僕に何かを教えてくれる時も、『多分有紀さんならこうすると思う』って」

「あらまあ!私は年の離れた友達か妹みたいに思ってるのに」

「妹・・・ですか」

黒木は、少し意味ありげな言い方をした。


その後、戸田さんが目を覚まして、
『ここはどこなの?』
と、騒ぎ出す雰囲気になりそうだったが、
『今日は私に付き合ってお泊まりしてくれてありがとう』
と言うと、納得して、また眠りに着いた。


午前1時を過ぎると、さすがにみんな疲れたのか、穏やかな寝息を立てて眠っていた。

午前3時の幸枝さんのトイレ介助の時も、誰も目を覚ますことなく、夜が明けてきた。

黒木と私も、2時間ずつの仮眠を取れて、思った以上には楽な夜勤だった。

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