テキストサイズ

ユリの花咲く

第5章 救急搬送

「ありがとう、有紀ちゃん。よろしくお願いします」

宮沢施設長は、私の手を握って、頭を下げた。

「頭をあげて下さい、施設長。ずいぶん、悩まれた末の事なんでしょう?
多分、他のスタッフも、出来る限りの協力はしてくれると思いますから」

「ありがとうね。有紀ちゃんがいてくれて、本当によかった」

宮沢施設長の顔に、少し笑顔が戻った。


翌日、スタッフを集めて、田辺さんの対応についてミーティングがもたれた。

宮沢施設長の説明のあと、佐久間さんが真っ先に発言した。

「とにかく、みんなで力を合わせれば、何とかなるよ。私も出来る限り、みんなに協力するから。
とりあえず、田辺さんの朝の介助は、私が来てからにしましょう。一人で無理してると、ろくなことはないから」

佐久間さんの発言のあと、深津さんが言う。

「私も、日勤の時には、1時間ほど、早く来るから。朝のスタートが遅れても、人数が居れば何とかなるでしょう?」

「ありがとう」

宮沢施設長が頭を下げる。

「私は、自分の夜勤以外の時は、休憩室で泊まります。万一の時には、すぐに対応出来るように」

私は言った。
遥の方を見ると、大きく頷く。

「あたしも。毎回は無理だけど、有紀さんと交代で、どちらかが居れば、夜勤の人も安心でしょ?」

遥が言うと、それを聞いた拓也も言った。

「僕も、そうします。どうせ家にいても、ゲームしてるだけだし、休憩室でゲームしてますよ」

「あら?デートする相手はいないの?」

遥が突っ込んだ。

「はい。遥さんが、デートしてくれないので」

拓也はおどけて言った。

「僕も、まだまだ力不足ですけど、緊急対応してる間の、他の利用者さんの面倒位は見られますから」

宮沢施設長の目が潤んでいる。

「みんな、ありがとうね」

「オール宮沢でがんばります!」

拓也が言った。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ