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ユリの花咲く

第5章 救急搬送

「有紀さん、遥ちゃん、ようお越し!」

マスターが元気な声で迎えてくれた。

「とりあえず・・・」

私が言うと、

「生、3つかな?」

マスターが言った。

私が黒木の顔を見ると、頷いて見せる。

「あと、黒木さん、何がいいかしら?」

私が黒木に訊ねると、唐揚げと枝豆を注文した。

遥はイカの姿焼き、ポテトフライ、串カツと、定番メニューを一式注文した。

奥さんがおしぼりを渡してくれながら、

「こちらの男性、初めてやね?瑞祥苑の人?」
と、訊ねる。

「そう。同僚の黒木さん」

「黒木さんね。インプット完了!」

奥さんは言った。
これで、奥さんは確実に客の名前を覚えてしまう。

「いいお店ですねえ」

黒木はまわりを見回して言う。

「マスターも奥さんもいい人だし、何を食べても美味しいのよ」
遥が言った。

「それにしても」

黒木が話し始めた。

「瑞祥苑って、凄い施設ですよね」

「凄いって?美女が多いってこと?」

遥が茶化して言う。

「そ、それもあるけど・・・。僕は、工場以外の職場は知らないけど、こんなに思いやりのある職場だと思わなかった。
ここに来る前、友達にさんざん嫌な話ばっかり聞かされたから」
黒木は言った。

「女の職場だから、どろどろした人間関係がややこしい、とか?」
私は質問した。

黒木がそれに頷く。

「そうなんです。じいさん婆さんの、下の世話して、嫌みな女にこき使われてって・・・。
でも、全然違った」

「あたしも聞いたよ。親にも言われた。
大学出て、働く場所じゃないでしょって」
遥が言う。

「でも、有紀、、さんに会って、目から鱗って言うか・・・、ここに勤めて良かったって思ったな。黒木さんは、どうして最終的に、うちに決めたの?」

無邪気に訊ねる。

「最初は、宮沢施設長かな。他に良さそうな所がなかったって言うのはあるけど、
宮沢施設長に話を聞いて、この人の部下になるのもいいなって・・・。
ちょっと上から目線の言い方だけど、あんな上司は、前の職場にはいなかったから」

黒木は言った。

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