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ユリの花咲く

第5章 救急搬送

「じゃあ、美女が揃ってるって言うのは、理由じゃないの?」

遥が、また茶化して言う。

「それは、入ってから。
有紀さんは素敵だし、遥ちゃんもかわいいし」

「ありがとう!取って付けたようなお世辞!」
遥が笑う。

「でも、こんなにみんながひとつの方向を向いてる職場って、珍しいと思ったな。
だから、今日はもう少し話したくて」

黒木が言った。

「他の職場で、誰かが夜勤の時、緊急事態に備えて会社で待機するなんて、考えられないでしょ?それも、給料無しで。
しかも、スタッフが自主的に、なんて」

「だよねえ。あたしも瑞祥苑じゃなかったら、絶対言わなかったな」
遥は私を見つめて言った。

「時代には逆行してるよね。今は、個人の自由とか権利に厳しくなってるから。

それはそれで良いことなんだけど、その職場の状況やトップの考え方によるのかな。

私たちの職場みたいに、小さな会社で個人の権利ばっかり主張してたら、成り立たなくなることもあるし。

それに、吉岡クリニックの先生も、そういうことをキチンと見ていてくれるから、協力したくなるのよね。
今は、自分の時間を犠牲にしていても、きっと何かの形で返してくれるから。
実際、こんなに小規模デイサービスで、スタッフをこんなに豊富に雇っている所ってないのよね。
時々、宮沢施設長の資料を見せてもらったりするから、それは良くわかるの。
利用者最大でも一日10人で、日勤に丸々3人も入れて、夜勤は別に手当てを出してたら、普通は経営が成り立たなくなるからね」

私は言う。

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