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ユリの花咲く

第2章 瑞祥苑

フロアーに戻ると、レクリエーションの最中だった。
今日は、みんなでぬり絵をして、それを切り抜いて、七夕の飾りを作るようだ。

拓也もワイワイ言いながら、おばあちゃんたちの真ん中で、完成したぬり絵を切り抜いている。

本当なら、利用者さんにやってもらいたいけれど、万一の事故を考えると、刃物には触れさせられない。

ソファーに座り、利用者さんを手伝っている私に、佐久間さんがすり寄ってきて尋ねた。

「ねえ、何の話だった?」

「新しい人が面接に来るんですって。
それで、私に立ち会ってほしいって」

佐久間さんは、大きく頷いた。
「それがいいよ。せっかく、いい雰囲気なんだから、変な人ならいないほうがマシだからね」

「そう、ですよね」

私は相づちを打つ。

「あ、佐久間さん。申し訳ないんですけど、ちょっと遥に電話してやっていいですか?」

「いいよ。知らせてあげて」
佐久間さんが快諾してくれた。


私は浴室に行って扉を閉め、桐谷遥に電話をかけた。

何回か呼び出し音がして、眠そうな遥の声が聞こえた。

『もしもし、有紀~?』

間延びした遥の声。

「あ、ごめんね、寝てた?」

『大丈夫。ベッドの中で、ボーッとしてただけだから。
それより何かあったの?』

「大した話じゃないんだけど、もしかしたら新人さんが来るよ」

『へえ!ねえねえ、どんな人?男?女?若い?それともおばさん?』

遥が矢継ぎ早に質問してくる。

「せっかちねえ。あのね、45歳の男性。未経験」

『なあんだ、おじさんかぁ』

失望したように言う遥に、私は言う。
「でもね、使えそうな人なら、遥も助かるよ。
山ちゃんの相手、あんまりしなくていいかもよ?」

『そうかあ!そりゃいいわ!』

「まだ、喜ぶのは早いよ。今日の夕方に面接しての事だから」

『だよね。変なヤツだったら、実君の相手してる方がマシだよね。わざわざ、ありがとう』

遥が電話を切った。

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