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ユリの花咲く

第5章 救急搬送

『どんな状況ですか?』
という相手に、
状況を伝える。
「呼吸ありません。脈は橈骨も頸動脈も振れてません」

落ち着かなければと、わかっていても、ついつい言葉づかいも荒くなる。

遥は、山田の相手をしながら、施設長に電話を入れる。

「宮沢施設長、10分程で来るわ」
遥が言った。

あとは・・・
頭に浮かんだのは、夏川千賀だった。

自分の携帯で、千賀に電話を掛けた。

すぐに千賀がでた。

『有紀?どうしたの!』

「田辺さんが、、田辺さんが、呼吸してなくて。脈も振れないの」
私が言う。

『有紀、まずは落ち着きなさい!救急車は呼んだわね?』

「うん。呼んだ」

『宮沢さんとドクターには?』

「宮沢さんには、遥が連絡した。先生にはまだ・・・」

『じゃあ、ドクターには私が連絡するから』

「ありがとう・・・」

『それとね、AEDあるよね?とにかく救急車が来るまでに、試してみて』

「でも、さわったことない」

『そんなこと、言ってる場合じゃないわ。
もしかしたら、それで持ち直すかも知れない。
ケースを開けたら、指示してくれるから、その通りにやればいいのよ!』

私は電話を繋げたままにし、AEDをセットする。

『離れてください』

という音声のあと、電気ショックが田辺さんの身体を走る。

恐る恐る胸に手をやると、微かな拍動が感じられた。

「動き出した!」

その時、救急車のサイレンが近付いて来た

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