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スローラブ

第1章 変わった人

 ふんふん、と鼻唄を唄いながらコンビニに入る。仕事帰り、コンビニやスーパーでお酒を買って家で一人飲みするのが最近の一番の楽しみだ。今日の肴は島田さんが触ったボールペン。あれだけでこんなに幸せな気持ちになれるんだから、私ってば結構幸せ者だ。

「あ、新しいの……」

 いつもは欲しくてもスルーしていたちょっとだけリッチなコンビニスイーツ。今日はちょっと奮発して買っちゃおう!
 お酒とスイーツを買ってコンビニを出る。少しずつ涼しくなってきて、心地いいそよ風が頬を撫でる。見上げると、珍しく星が綺麗に見えた。

「私、幸せだなぁ……」

 そう呟くと、ふふ、と笑ってもう目の前に見えていたマンションに入った。オートロックを開けてエントランスに入ると、エレベーターのところに人影が見えた。そばに行ってみると、見覚えのある人だった。
 黒縁の眼鏡にモジャモジャの髪。今日は仕事帰りのようで、スーツを着ている。でもそのスーツは当然のようにしわしわで、たまに休日に見た時のヨレヨレのTシャツと変わらない。……この人、お隣さんだな。

「こんばんは」

 後ろに立ってそう言うと、お隣さんは少し振り返って私を見た。

「……あぁ、どうも」

 お隣さんはそう言うとすぐに前を向いた。…格好には無頓着なのに、なぜか不潔に見えないんだよねこの人って。どうしてだろう?と不思議に思っているとエレベーターが来て、お隣さんに続いて乗り込んだ。

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