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スローラブ

第1章 変わった人

「5階ですよね」

 お隣さんは私をお隣さんだと認識してくれていたらしく、そう聞いてきた。

「あ、はい。すみません」

 お隣さんは5階を押すと、次に閉めるのボタンを押した。シーンとしたエレベーター内。何となくキョロキョロしていると、お隣さんが持っているビニール袋が目に入った。あれたぶんビールだな……。お隣さんもお酒好きなのかな。これから一人で飲むのかな。……ま、関係ないか。

「……あ」

 突然お隣さんが声を上げた。ビクッとしてお隣さんを観察していると、エレベーターが5階に着いた。

「すいません、忘れ物したんで先降りてください」
「え?あ、はい……」

 さっきの声は忘れ物に気付いた声だったらしい。私が降りると、エレベーターはまた下がっていった。

「あー、疲れた」

 玄関に入って一言。25歳にしてすでにおっさん化している気がする。電気を点けて玄関の前を通ってリビングに向かう。異変を感じたのはリビングのドアを開けた時だった。何故か外で感じたそよ風を頬に感じる。窓閉め忘れたかな、とリビングの電気を点けた瞬間。テレビの横の棚の前に立つ男と目が合った。

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