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星が輝く夜に

第1章 プロローグ

 そして、今私は彼に手を引かれホテル街を歩いている。あまりの展開に目眩がしそうだ。私はどうして初対面の男の人と手を繋いでこんなところを歩いているのか。しかも、終始無言で。緊張しすぎて吐きそうだ。もしかしたら酔っ払っているからこんなに心臓がドキドキしているのかもしれないと思ったけれど、一瞬彼と離れてトイレに行った時は落ち着いたから絶対に違う。頭の中は混乱して、どうでもいいことを延々と考えてしまう。
 処女でそんな機会もないくせに、何故か下着だけは毎日気合を入れていいのを着けていた自分を初めて褒めたい気分だった。え、ていうか、ほんとにするの?

「ここでいい?」

 彼が振り向く。さっきと変わらない涼しげな目だ。断るならここしかないのに、帰るならここしかないのに。混乱している私はひたすら首を縦に振った。処女であることに焦っていた。彼のことを素敵だと思った。たった二つの理由で、私は今処女を彼に捧げようとしている。本当にいいのか?後悔しないのか?……わからない。後悔、するのかな。

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