優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第6章 メゾンボナール305号室
荷解きというほどの荷物も持っておらず、引越しというほど大掛かりな何かをすることもなく、やることが済んでしまった。
休憩がてら、澤北先生が淹れてくれたお茶を飲んで、ほっとする。
まだ、自分の家という実感はないが、『帰る場所』と言われるとすごくしっくりくることに気づいた。
「……わたし、ちゃんと毎日、帰ってきますね」
両手でマグカップを持って、見つめたまま、そうつぶやいていた。
帰ること、帰る場所が地獄じゃなくなった。それだけでもうれしくて、頬がなかなか引き締まらなくて、俯く。
「当たり前だ」
澤北先生にそう言われた時に、引き締まっていなかったのは頬だけじゃなかったことに気づかされた。
帰ってくることを、楽しみにしていい。
わたしにはもったいないくらいに幸せなことを、当たり前だと言われて、2人に受け入れられていることを感じる。
幸せになっていいんだよと、言われているようだった。
何かが心の中で決壊する。悲しくもないのに、目からぼたぼたと、大粒の涙が溢れていた。
止めようとしても止まらなくて、流れるままに放っておく他なかった。
休憩がてら、澤北先生が淹れてくれたお茶を飲んで、ほっとする。
まだ、自分の家という実感はないが、『帰る場所』と言われるとすごくしっくりくることに気づいた。
「……わたし、ちゃんと毎日、帰ってきますね」
両手でマグカップを持って、見つめたまま、そうつぶやいていた。
帰ること、帰る場所が地獄じゃなくなった。それだけでもうれしくて、頬がなかなか引き締まらなくて、俯く。
「当たり前だ」
澤北先生にそう言われた時に、引き締まっていなかったのは頬だけじゃなかったことに気づかされた。
帰ってくることを、楽しみにしていい。
わたしにはもったいないくらいに幸せなことを、当たり前だと言われて、2人に受け入れられていることを感じる。
幸せになっていいんだよと、言われているようだった。
何かが心の中で決壊する。悲しくもないのに、目からぼたぼたと、大粒の涙が溢れていた。
止めようとしても止まらなくて、流れるままに放っておく他なかった。