優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第6章 メゾンボナール305号室
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退院してきて、1ヶ月が経った。
ネクタイを手早く結びながら、春ちゃんは井田先生へと早変わりする。
今朝は一段と急いでいる様子だった。
「咲、朝ごはん。俺は先に家出るから、ちゃんと食べて出てきなね」
なんか、親って感じがする。
いつもは春ちゃんと一緒に朝食を摂るけれど、今日は職員会議と授業の準備で、早めに家を出るらしい。
家では春ちゃん、学校では井田先生。
退院してからできたルールだ。
それと、春ちゃんは先生をしていない時、一人称が俺になる。
まだ起きたばかりでぼーっとしながら、春ちゃんが忙しなく動く様子を目で追っていた。
「白いご飯だけでもいい……?」
「半分でもいいから」
「わかった」
「優、昨日当直明けで寝てるから、鍵かけて家出て。洗濯回してあるから、干すのお願いね」
「うん」
玄関までついていく。せめて、見送りはしようと思っていた。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい、気をつけてね」
慌ただしく言い残すと、春ちゃんは一足先に家を出た。
退院してきて、1ヶ月が経った。
ネクタイを手早く結びながら、春ちゃんは井田先生へと早変わりする。
今朝は一段と急いでいる様子だった。
「咲、朝ごはん。俺は先に家出るから、ちゃんと食べて出てきなね」
なんか、親って感じがする。
いつもは春ちゃんと一緒に朝食を摂るけれど、今日は職員会議と授業の準備で、早めに家を出るらしい。
家では春ちゃん、学校では井田先生。
退院してからできたルールだ。
それと、春ちゃんは先生をしていない時、一人称が俺になる。
まだ起きたばかりでぼーっとしながら、春ちゃんが忙しなく動く様子を目で追っていた。
「白いご飯だけでもいい……?」
「半分でもいいから」
「わかった」
「優、昨日当直明けで寝てるから、鍵かけて家出て。洗濯回してあるから、干すのお願いね」
「うん」
玄関までついていく。せめて、見送りはしようと思っていた。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい、気をつけてね」
慌ただしく言い残すと、春ちゃんは一足先に家を出た。