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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第7章 隠しきれないもの

「……無理にとは言わないけれど、婦人科で診てもらったほうが、安心だと思う」

やさしく慎重に、水野木先生が言った。
それが、わたしのいちばん恐れていた言葉だった。笑顔を作ろうとして、顔が強ばる。

「……診てもらうって、痛い?」

病院は怖い。入院が続いた時、検査や注射、導尿までして、体の自由が効かなくて嫌だった。
真っ先に、怖かったり痛かったりすることが頭に浮かんでいた。

「痛くないよ。異常がないか、確認するだけ」

井田先生は、少し春ちゃんの顔が混ざる。
きっと前々から澤北先生とも話していたんだろう。

「わたしもね、あなたくらいの頃は、周期が安定してなかったの。きっと大丈夫よ、でも念の為ね。大学病院の産婦人科に、わたしの知り合いがいるから」

「うん。僕も澤北先生も、昔お世話になった先生なんだよ」

わたしは恐る恐る頷いた。
よくあることだけど、検査は必要。
その矛盾した感じに、前までの、暴力もご飯抜きも当たり前だった生活の、異様な感じがわかる。

ため息を飲み込みながら、俯いて、病院に行くことを受け入れた。

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